”釣れない川”のリサーチ

水温19℃、気温32℃。

真昼からのフィールドリサーチは渓相は良いがあまり釣れないと噂の川へ友人と。厳しい暑さで汗が吹き出し、顔の周りにまとわりつくメマトイが煩くイライラが募る。暑いのでフライを結ぶのも川の水に浸かりながら。釣れたのは可愛いサイズのアメマス数匹で共通して速い流れの岩の陰というイワナ好みのポイントからだった。暑さのためハッチはゼロ、もちろんライズも無く、難しい釣りになりつつあった。

それにしても針葉樹と広葉樹の入り混じった森に囲まれ、大岩の沈む好ポイントが点在している良い川。こんなに暑くなければ鳥や動物も見られたかもしれない。本当に釣れない川なのか??地形は文句なしで、下流域では実績も出している。この日が駄目でも結論は急がず、何度も通うつもりだった。

1kmの距離を2時間かけて丁寧に釣り上がるが時間帯と水温からドライフライでは成果は出せないと判断し、折り返しはニンフで底を取ることにした。この頃には暑さのピークは過ぎ、太陽は雲に覆われて若干の風も。このままイブニングで盛り上がるかな・・・と期待。

自分の釣りをメインにするつもりで、友人のガイドは今回は少しだけ。フライの提供とほんのちょっとのアドバイスのみ。

タングステンのヘッドに水馴染みの良いダビング材で細身に巻いたニンフ。フックはTMC403BLJ。ポイントまでスッと沈めマーカーの動きと感覚でアタリを取る。サイターティペットで仕掛けを作るときもあるが、最近はなるべくシンプルに小さなマーカーのみとしている。ウェイトはトラブルに繋がるため付けず、グラム単位で調整したフライの重さで沈める。

ドライフライは水面を目で見て観察するが、ニンフィングは水中を想像することと手に伝わる感覚をヒントに観察をする。ただやみくもに沈めるだけでは観察は止まり、面白みは半減してしまうので要注意。ニンフの世界では”水を読むこと”がより重要視される。

そんなわけで自分のマーカーに集中していると・・・後方でけたたましいリールの反転音が響き、目の前をラインが走り抜けていくので驚いた。振り返ると友人のロッドがえらい角度で弧を描いている。フッキングしたポイントから下流には長めのランがあり、ゴロゴロ岩を越えて次のプールが。慌ててロッドを置き、ネットを持って二人で走って追いかける。

5xのティペットにバーブレスフック、あたふたする二人の釣り人とは対照的にマスは冷静で底に張り付く作戦を取っており、ここは無理せずじわじわと負荷をかけることにして膠着状態が続く。

時折思い出したかのように走り追いかけてを繰り返すうちに、流れが速い岩盤の瀬に入ってしまうが相手はまだまだパワフルで驚いたことにそんな速い流れでも定位して張り付いている。目の前まで近づいたものの、あまりに流れが速くネットインできない。

さらに激しいホワイトウォーターはすぐそこだった。

間違いなくあそこに入られると糸は切れるだろう。

意を決して狙いを定めてネットを突っ込むが魚の頭にネットのフレームがゴツンと当たり失敗。一瞬魚影を見失い心臓はバクバクと跳ね上がる。この緊張のピークの最中、これがガイドの一番重要な仕事だと確信した。

54センチ、斑点が多めの美しい魚体。体高は手のひら一枚分はあり、あの速い流れでの定位に納得がいった。

二人で走り、魚をキャッチすることには自分で釣るのとは違った喜びがある。もしかしたらこちらのほうが嬉しいかもしれないと最近よく思う。この魚と友人の笑顔は強く記憶に残り、大事な想い出になった。本当にありがとう!

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